支援レポート Vol.16
老朽化設備の更新も含めた総合的な省エネを推進
エア配管系の漏れ防止対策など、きめ細かな対策も
森産業は昭和18年に操業を開始。きのこ種菌・菌床および、きのこ加工食品・飲料の製造販売に加え、栽培施設の設計・施工・資機材販売等を手掛ける、総合食品製造業です。
食品産業は加熱用熱源としてボイラを使用するなど、エネルギー多消費産業といえますが、きのこの育成には、培養室、生育室を低温に保つための冷凍機用電力消費が多いのも特徴の一つです。
森産業ではこれまで、空調設定温度の緩和、照明の間引きや高効率機器への更新、デマンド監視装置の導入など、各種の省エネに取り組んできました。
今回、森産業が省エネ診断を希望した理由は、設置後40年以上経過し、経年劣化が進んでいる冷凍機、炉筒煙管ボイラの更新も視野に入れた総合的な対策が必要となり、専門家の現場視察による省エネ診断を希望されました。ボイラでは空気比低減による最適運転をめざしてチューニング診断も受診しています。
エネルギー使用合理化専門員による現場視察とエネルギー使用量の分析、ヒアリングを経て、約1か月後の診断結果報告会で下記に掲げる8件の改善案を提案しました。運用改善では工場エア関連の電力節減など、高効率設備への更新では、冷凍機とボイラに加えて変圧器、照明設備についても提案しました。
NO | 提案内容 | ||
---|---|---|---|
1 | 運用改善 | コンプレッサ | エアコンプレッサの吐出圧力低減 |
2 | 運用改善 | エア配管 | エア配管の漏れ防止 |
3 | 運用改善 | デマンド管理 | デマンド監視装置の活用 |
4 | 投資改善 | 冷凍機 | 高効率機器への更新 |
5 | 投資改善 | ポンプ | 冷水ポンプのインバータ化 |
6 | 投資改善 | ボイラ | 高効率ボイラへの更新 |
7 | 投資改善 | 照明設備 | 事務所照明のLED化 |
8 | 投資改善 | 変圧器 | 変圧器の更新 |
ボイラの空気比適正化はチューニング診断で実行
昭和48年製造の炉筒煙管ボイラ(5t/h)は設置後40年以上経過して老朽化が進んでおり、小型貫流ボイラへの更新も考えられたが、投資金額が高いため、まずは既設ボイラをチューニングして、どこまで省エネできるかを検討することになりました。具体的なチューニングは経験がなかったため、「ボイラの空気比調整」のチューニング診断を受診しました。
まず、実態把握のため、燃料使用量を変化させ、各空気比での排ガス成分、既設油量メーター、二次空気ダンパ開度を測定。その結果、燃料弁と二次ダンパ開度のバランスを取るリンク機構の調整が悪く、燃焼負荷率25%~80%で空気比は1.8~1.1の範囲で変化していることがわかりました。
そこで、リンク機構の調整を実施し、全燃焼範囲で空気比は1.3前後になり、特に燃焼負荷率が低い領域で省エネ効果が得られました(燃料削減量6.3kL/年、削減金額356千円/年)。
提案された運用改善策はできるものから順次実施
「コンプレッサの吐出圧低減」「デマンド監視装置の活用」はすぐに実施。「エア配管の漏れ防止」も順次対応されています。
投資案件は計画的に実施中、補助金活用の検討も
「事務所蛍光灯のLED化」は既に更新済み。「冷水ポンプのインバータ化」「高効率冷凍機への更新」は投資効果と予算を勘案しつつ、計画的に順次実施していく予定です。
なお、ボイラはチューニング診断によって現状の最適運転にまでたどりつくことができましたが、容量が過大で低負荷運転が多く、ボイラ効率が低いことから、「平成29年度エネルギー使用合理化等事業者支援事業」の補助金で更新し、更なる省エネを実現しました。