省エネ・節電ポータル

省エネ支援現場レポート

支援レポート Vol.6

  • 省エネ診断
  • 公共・医療

社会福祉法人 中越老人福祉協会
特別養護老人ホーム やすらぎの里

補助金を活用しながら提案施策を実行し、
年間約600万円超のコスト削減を達成!

社会福祉法人 中越老人福祉協会 特別養護老人ホーム やすらぎの里
(新潟県・特別養護老人ホーム)

やすらぎの里は、「人が真ん中」という理念のもと、昭和55年 新潟県出雲崎町(いずもざきまち)に開設。以来、地域福祉の拠点として24時間365日、入浴・食事などの介護サービスを提供しています。

受診までの経緯

震災後の電気代・燃料代上昇に加え、空調設備が老朽化。
「中立的な立場の専門家」からのアドバイスに期待して。

やすらぎの里では、空調・給湯・照明・厨房の4つが、エネルギーの主な用途。立地的に「冬は寒く、夏は暑い」環境ですが、室温管理には「入居者様に身体的負担をかけない配慮」が必要とあって、特に空調コストがふくらみがちでした。東日本大震災以降は電気代・燃料代の上昇に加え、老朽化した空調設備の保守費も増加。しかし、設備の更新一つとっても様々な方法があるため、どこにアドバイスを求めたものか決めかねていました。
そんな折、新潟県環境企画課より「中立的な立場の専門家」からアドバイスが受けられる「無料省エネ診断」の紹介があり、受診を決意されました。

診断結果と専門家からの提案

夏の冷房時より、冬の暖房時に高くなっていた空調負荷。
一つの着眼点から、省エネのプロが導き出した多様な施策。

診断を担当したエネルギー使用合理化専門員は、やすらぎの里のエネルギー使用状況を分析した結果、同施設の空調負荷は、夏季の冷房よりも、冬の暖房需要が大きいことに着目。
ヒアリングと現場視察を通じ、空調や断熱を中心にした様々な省エネアイデアを提案し、具体化していきました。
そして、綿密なシミュレーションを経た後、約1ヵ月後の診断結果報告会では、投資を伴わずすぐに実行できる運用改善4件、投資改善6件、計10件の施策が提案されました。

提案全体の効果

NO提案内容
1運用改善空調外気導入量削減
2運用改善空調冷暖房温度緩和
3運用改善空調吸収式冷温水機の冷水温度の緩和
4運用改善デマンドデマンド監視強化
5投資改善空調吸収式冷温水機をヒートポンプ空調機に更新
6投資改善照明LED化と間引き
7投資改善トイレ用水の利用
8投資改善変圧器高効率変圧器の更新
9投資改善照明老朽化外灯の更新
10投資改善参考変圧器の容量アップ更新

取り組みの成果とこれから

エネルギー使用量の半分以上を占めていた「空調」を中心に
様々な改善策を実践し、公的補助金も積極的に活用。

その後、やすらぎの里では、エネルギー使用量の半分以上を占めていた「空調」対策を中心に、提案施策を実行。投資を伴う改善については、自治体等の補助金セミナーで積極的に情報収集を行い、補助金も活用されました。

懸案だった「空調機の更新」を中心に。

まず、空調機本体は、老朽化していたセントラル方式の空調設備を、各部署ごとの電気ヒートポンプ式空調機に更新。高効率空調設備に対応するためキュービクルを改造し、3相動力トランスも高効率型に更新。建物の空調効率を高める対策としては、断熱性を強化するため、厚さ50mmの断熱材をほぼすべての天井に充填しました。また、大部分の窓ガラスには断熱・日射調整フィルムを貼りました。
これらについては、自治体等のセミナーで情報収集を行い、投資の一部を補助金によって賄いました。情報収集の翌年平成26年、やすらぎの里の事業は「国交省 建築物省エネ改修等推進事業」として採択され、27年には補助金交付が決定。事業に要する経費約55,359千円に対し、交付された補助金は約18,857千円でした。

設備対策とセットで取り組んだ「換気低減」。そして…。

空調機の更新と並行して取り組んだのが、換気の適正化。大型換気扇による全棟換気をやめ、入居者が生活習慣として行っていた朝の窓開けや、職員が換気のために行う窓開けを減らすよう話し合い、実行しました。その際ネックとなる加湿・除菌・消臭の問題には、湿度保持のために大型加湿器を5台を導入したほか、各部屋に空気清浄機を設置して対応。窓開け換気を最小限にし、熱損失を抑えました。
また、デマンドコントローラーの導入により、施設全体の電力使用状況を事務所で把握し、管理を行っていました。そのほか、浴室のシャワーヘッドや蛇口を節水型への更新と併せ、入浴スケジュールに合わせたお湯張りなどの運用改善が徹底して行われていました。さらに、古い食器洗浄機を省エネ節水タイプに更新、照明もLEDに交換しました。

これらの活動の結果、冬季、夏季の空調エネルギーが減少し、ベース電力も20%程度削減できました。
対策による効果は、エネルギー使用量で、原油換算65kL/10ヵ月と約39%削減、コスト換算では約4,900千円/10ヵ月と約33%の削減を達成。しかも、この数字は空調などの工事後12月からの10ヵ月で比較しているため、工事前の2ヵ月を入れるとさらに効果は大きくなります。また、灯油を使用しなくなったことや保守業務の軽減を考慮すると、約6,000~7,000円/年にのぼると予想されます。

今や「省エネ」は福祉施設にとっても重要なもの。

省エネ診断の受診とその後の活動の成果について、振り返っていただきました。
設備管理者の平賀様は、導入した高効率機器が充分な暖房能力を持つのか? 温度や臭いなどの問題を心配されたそうですが、終わってみると「そういう懸念もなく、600万円という経費削減ができたことで非常に驚いております」とのこと。
「節約できた経費は、介護サービスの質向上のため、他の設備や、職員の研修や福利厚生含む改善に宛てております。省エネは、今や私どものような老人ホームや福祉施設でも、経営の一環として重要なものと感じました」と、園長の星野様は語られました。