支援レポート Vol.5
エネルギーコストは欠かせない必要経費?
無駄への気づきが、省エネ意識として定着。
昭和10年の事業開始以来、ひとの「生きる」をささえるために、「一人ひとりが専門家/一人ひとりが経営者/一人ひとりが地域人という理念のもと、24時間365日、介護サービスを展開しています。
特別養護老人ホーム ゆうすいでは、エネルギーコストを「必要なサービスを提供するための必要経費」と認識。そのため、省エネなどコスト削減には積極的に取り組んでいませんでした。「利用者の皆さんの健康管理を考えますと…」と施設長の金子様が語られたとおり、省エネルギーという発想自体なかったと言っていいでしょう。
「専門家による診断を受けてみては?」
省エネ診断を受診してみようと思ったきっかけは、行政機関からのそんなアドバイスでした。
診断担当の専門員は、現地調査において、施設自体が省エネに向いていないと認識し、大きな浴槽や、増床棟の高天井構造によるエネルギーのムダに注目しました。
たとえば、屋根裏まで見渡せる増床棟の高天井にパネルを貼るなどの改修をすることで、空調コストはグンと抑えられそうでした。
こうしたアイデアは、調査後のミーティングで伝えられた後、約1カ月後の診断結果報告会では合計12項目の施策が提案されました。
NO | 提案内容 | ||
---|---|---|---|
1 | 運用改善 | ボイラ | ボイラの空気比の適正化 |
2 | 運用改善 | 照明 | デイサービス食堂照明の点灯管理 |
3 | 運用改善 | 衛星設備 | トイレ便座ヒーターの温度管理 |
4 | 運用改善 | 給排水 | 調整可能な水栓類の水量調整 |
5 | 運用改善 | 空調設備 | 冷温水ポンプ類の運転管理 |
6 | 運用改善 | ポンプ | 濾過ポンプの大小切り替え |
7 | 投資改善 | 設備 | 大浴槽容量の縮小 |
8 | 投資改善 | 設備 | 増床等の高天井改修 |
9 | 投資改善 | 設備 | 浴槽水面にカバー設置 |
10 | 投資改善 | 設備 | 電気ポットの見直し(魔法瓶タイプへ) |
11 | 投資改善 | 給湯設備 給排水 | シャワーヘッド変更(節水タイプへ) |
12 | 投資改善 | その他 | 送迎用スペースの扉にカーテン取付 |
受診によって目覚めた省エネ意識を、施設のスタッフ全員に広げ、定着させていくために、診断報告会の後、ゆうすいでは、内部に省エネ推進のための委員会を立ち上げ、水道、電気使用量と料金の掲示など、積極的に啓蒙活動を行いました。
設備投資を伴わない運用改善と、設備投資を伴う改善のいくつかをご紹介します。
設備投資を伴わない運用改善。
デイサービスラウンジでは、昼間の自然光を採り入れることで充分な照度を得ていました。また、日中の窓際やその他不要照明の消灯など、点灯時間管理を徹底することで、年間の点灯時間を短縮し、使用電力量を削減。ほかにも、温暖な季節にはトイレの便座ヒーターを停止したり、調整可能な水栓類については水量調整を行うなど、設備の改善運用を細やかに実施していました。空調の運転管理や、ボイラの空気比についても見直して適正な運転を心がけ、さらに、今まで使われていなかったインバータを使用して空調用のポンプ運転を行った結果、大きな省エネ効果を発揮しておられました。
設備投資による改善。
増床棟の高天井には、パネルを貼ることで空調の効率化を行い、エネルギーコストを削減されていました。厨房ではガスコンロを電気コンロへ一新し、新しい空調設備と合わせることで、厨房の温度上昇によるエネルギーのロスを抑制。
現場視察時に専門員が着目した浴槽については、容量を縮小することでお湯を沸かす際に必要なエネルギーを削減。併せて、使わない時にはシートを被せる保温対策も実施していました。
また、デマンド管理の一環として、チラーの運転時間をタイマー制御に改修。デマンド管理装置を取り付けることで消費電力量の「見える化」を行い、日々の運用改善や、省エネ啓発運動に役立てているご様子でした。
「省エネ」に対する意識の変化が、着実に浸透。
そして、大きく変わったのが、ゆうすいの皆さんの意識。「無駄な部分がこれだけあったのかということに気づきまして」と、金子様も驚きを隠しません。「それぞれの提案の中に、予測される削減の数値も具体的に出ていたので、よし、できることからやってみようというモチベーションにつながりました」。
省エネに対する意識の変化は、スタッフの日々の注意点にも影響を及ぼしていました。
「常に、電灯や空調のスイッチに気を配るようになりました」と、業務主任の本間様。設備について性能を含めて勉強できたことも、設備の効率的な運転につながっているようです。「数値化された結果を踏まえて、改めて省エネの重要性を認識できるようになりました」。