支援レポート Vol.18
経営コスト削減に直結する省エネ活動の展開
省エネ診断による改善提案からチューニング診断へ
平和発條の操業は昭和26年。業界発展のため「製法特許」を公開した「ばね座金」をはじめ、自社開発の独特な製法によるファスナー製品、オンリーワン技術で製造する皿ばねなど、ばね製品でモノづくりを支えています。
平和発條では、第二種エネルギー管理指定工場の指定により、原単位年平均1%削減に取り組む必要があり、総合マネジメントシステムの一環として省エネ活動を推進し、①コンプレッサのインバータ機の導入、②デマンド監視装置・自動力率調整装置の導入、③不在時の照明の消灯、間引きなどを実施して来ました。
次の省エネテーマとして照明等の設備更新を進めるにあたり、経営層から補助金制度の活用を検討するよう指示が出たことで、社外の省エネ情報収集を始めたところ、ベアリング工業会から無料省エネ診断を紹介され、今回の受診となりました。
エネルギー使用合理化専門員による現場視察とエネルギー使用状況ヒアリングに基づき、改善案のシミュレーションを経て、約1か月後の診断結果説明会で下記に掲げる4件の運用改善、6件の投資改善案が提案されました。
NO | 提案内容 | ||
---|---|---|---|
1 | 運用改善 | コンプレッサ | コンプレッサの吐出圧力低減 |
2 | 運用改善 | 工業炉 | 焼き入れ炉の立ち上げ時間の見直し |
3 | 運用改善 | 照明 | 採光による窓際照明の消灯と通路照明の間引き |
4 | 運用改善 | デマンド管理 | デマンド監視装置活用による最大電力抑制 |
5 | 投資改善 | 空調設備 | スポット冷房空調機の吸気温度低減 |
6 | 投資改善 | 空調設備 | 高効率空調機への更新 |
7 | 投資改善 | 工業炉 | 焼き入れ炉の断熱強化 |
8 | 投資改善 | 照明 | 照明のLED化と人感センサの導入 |
9 | 投資改善 | 変圧器 | 変圧器の更新 |
10 | 投資改善 | 変圧器 | 変圧器の統合 |
運用改善のなかでも効果が大きいコンプレッサの吐出圧低減は、過去に社内で取り組んだものの、多数のコンプレッサがループ配管でつながっており、各々のコンプレッサをどう設定するのが最適なのかがわからず、追い込みきれていなかったため、診断結果説明会で紹介されたチューニング診断を受診することにしました。
コンプレッサ9台が配置された4系統の配管系統について計測を実施し、チューニング診断を実施した結果、省エネ診断報告書の試算居所の効果が得られました。なおエアタンクがない系統ではコンプレッサが短周期でオンロード/アンロードを繰り返しており、エアタンク設置が望ましいことが判明するなど、計測することの意味合いが実感できました。
提案施策10件に対し、社内の省エネ委員会で優先順を付けて実行し、5件が実施済みで、未着手のテーマについても、運用改善テーマを優先して順次実施する予定です。
各種対策の積み重ねが最大電力の低減に直結
今回の省エネ診断の受診を機に、全員の「節電」「省エネ意識」が向上したこともあり、省エネ施策提案が順次実施され成果をあげています。
近年の生産増に伴い最大電力の増加傾向が危ぶまれる中、最大電力は3年間で100kWの削減を実現(平成26年、1,630 kW→平成29年、1,530 kW)。これは、事務所照明の見直し、事務所・工場の空調機運転の停止等の省エネ活動に加え、デマンド監視装置の警報時の対象設備の一時停止、省エネ型機器への更新等、各種対策の積み重ねが成果を現した結果といえます。
高効率機器への更新は補助金制度も利用して実行
照明灯のLED化は中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進事業費補助金を受けて実行し、省エネと経年劣化の環境改善につなげています。補助金の申請では、省エネ率などを自ら算出し申請書を作成・提出しました。
また、今後の設備増設を考慮して、2台の変圧器を400kVから500kVに容量アップして更新しました。トップランナー変圧器の導入により、容量増にもかかわらず、12千kWh/年の省エネになりました。
電気加熱炉の断熱強化は品質への影響の懸念があり慎重に取り組み中
年間電気量の69%を占める電気加熱炉の断熱強化は、放熱による夏期の作業環境悪化を防ぐためにも重要な課題です。断熱施工には、内部温度の変化による製品品質への影響や炉壁変形の懸念があるため、断熱塗料の採用を含めた断熱方法の検討を継続中です。効果の評価ツールとして、非接触で炉の表面温度を計測できるサーモグラフィの活用や、電力モニターの設置による断熱前後の消費電力量比較などを実施し、適切な断熱法を探しだし、他の炉にも水平展開する予定です。
省エネ診断の受診をきっかけに、社内の省エネ活動が活性化
専門家による改善提案は内容が分かり易く、省エネ活動の有益な指針となった。
多額の投資を伴う省エネ案件も補助金の活用と社内の連携で実行でき、大きな成果が得られた。
エネルギーコストの削減成果は、「儲けにつながる省エネ」として、経営層から高く評価され、これからの活動の励みとなった。
加えて、「今回の省エネ提案にはなかったのですが、診断を受ける中で自分たちが気づいた『コンプレッサの排熱利用』と『工程省略による生産プロセス改善』にもチャレンジ中です」と語ってくれました。