支援レポート Vol.3
ムダの削減だけでなく「経営改革」として取り組んできた省エネ活動。
成功との秘訣と次の課題は?
昭和44年の設立以来、家庭用炊飯器や電気ポットをはじめとするさまざまな工業製品を生産。その一貫した高度な生産体制、生み出される製品群とその品質から、業界では「総合力の気高電機」として知られています。
省エネ診断を受診する以前から、気高電気では、経営改革の必要性を感じていました。そのため、経費削減や生産性の改善など「経営改革」の一環として省エネ診断を受診することに。省エネに取り組む動機は、最初から明確だったと言えるでしょう。
気高電機の省エネに対する考え方は、「単にエネルギーの無駄使いをなくすだけでなく、生産活動の効率化ということで考えています」という、青戸常務の言葉に集約されています。
ただ、診断を受ける前の、省エネに対する従業員の皆さんの意識は、現在に比べまだまだ低いものだったようです。
専門員による診断は、エネルギー使用状況についてのデータ分析と、現場視察の両面から実施されました。プロの目が捉えた「気になる点」についての細かなやりとりを経て、1.従業員の省エネ意識を高める
2.空調やコンプレッサの管理強化
3.全体的な「見える化」の推進という3つのポイントが明らかに。これらは、その日の診断結果を総括するクロージングミーティングの場で伝えられました。
そして約1ヵ月後、それらの問題点を改善する具体的な施策として、すぐ実行できる5項目の「運用改善」、設備の更新などを伴う8項目の「投資改善」が提案されました。
NO | 提案内容 | |
---|---|---|
1 | 運用改善 | 空調設定の緩和 |
2 | 運用改善 | 空調機フィルター掃除の徹底 |
3 | 運用改善 | コンプレッサの吐出圧力低減 |
4 | 運用改善 | 空気配管の漏れ防止 |
5 | 運用改善 | 天井照明の正適化 |
6 | 投資改善 | 作業面積削減による空調負荷軽減 |
7 | 投資改善 | コンプレッサの適正配置 |
8 | 投資改善 | コンプレッサの台数制御 |
9 | 投資改善 | コンプレッサの廃熱回収 |
10 | 投資改善 | 射出成型機シリンダー保温 |
11 | 投資改善 | 電力計設置による最大電力削減 |
12 | 投資改善 | 水銀灯をメタルハライドランプに交換 |
13 | 投資改善 | 加工機械油圧ユニットのインバータ化 |
現状のムダと取り組みの成果を「見える化」した、善は急げの省エネ活動。
提案を受けてまず実施した活動は、従業員に「現状のムダ」を見せ、「やれば効果が出る」ことを知らせるというものでした。選んだテーマは「待機電力の削減」。まず、休日の電力使用量というムダを見せ、同時に週末退社時のブレーカーオフを呼びかける。その結果、休日の電力使用量を、従来の半分以下に削減することができました。
そのほか、自分たちですぐできることとして、不要照明の消灯、エアコンの設定温度と運転時間の管理徹底、圧空配管については空気漏れの調査と補修を。さらに、専門員の指摘に従い、コンプレッサの吐出圧力などを実施。
青戸常務も、「効果の大きさにびっくり」「これを機に皆の心に火がつき、各職場が競うように省エネ活動を始めてくれました」とのことです。
活動を継続的なものにしていく、省エネ推進体制の構築。
体制づくりと人材育成にも着手。部門ごとに電力管理範囲を明確にし、電力の監査、改善実施、月次報告などを行うため、省エネ委員会を立ち上げました。
各部門の省エネ委員には、積極的に若手を選出。中小機構から専門家の派遣を受け、教育を行いました。
また、82台の電力計を設置。社内開発のデータ収集システムとの組み合わせで、設備ごとの電力使用状況を「見える化」し、日常的に確認できるようになりました。
補助金の活用など計画的に実施した、投資を伴う省エネ対策。
生産設備のエネルギー削減には、より効率の良い設備への更新が必要。特に、電力使用量の半分以上を占めていた成型ラインの設備は、補助金を活用して計画的に更新しました。
こうして、設備更新だけで約30%の省エネを達成。同時に、約20%の生産性向上によって生まれた余裕を生かし、生産を高効率設備にシフトすることで、更なる省エネ効果が得られました。
2度目の診断を受け、気高電気の省エネは次のフェイズへ。
こうして、平成27年度 省エネ大賞(省エネ事例部門)を受賞した気高電機。省エネ活動がうまく運んだ要因の一つは、「できるところから、すぐに」取り組む実行力。そのスピードと徹底ぶりは、診断を担当した専門員に「診断員冥利に尽きる事業所様」と言わしめたほどです。
その後、2度目の省エネ診断を受診し、気高電機の省エネ活動は、新たなフェイズに。第2次中期計画のテーマは、「エネルギーのジャストインタイム」と「ピーク電力のカット」です。青戸常務は、「従業員のやる気を途切れさせない工夫」と「消費エネルギーと活動結果の見える化」を強調。併せて、「積極的に省エネルギー機器の導入を進めていきたい」と、次の目標を語られました。