省エネ・節電ポータル

省エネ支援現場レポート

支援レポート Vol.12

  • 省エネ診断
  • 金属

キングパーツ株式会社

品質も熱も生み出す精密機器部品の製造。
「見える化」を徹底し、計画的に省エネを推進!

キングパーツ株式会社(広島県・鉄鋼品(精密鋳造部品))

キングパーツは、昭和39年に創業。ワックスで造った鋳型に溶けた金属を流し込む“ロストワックス製法”という精密鋳造技術で、さまざまな分野の精密機器部品を製造・販売しています。

受診までの経緯

高い品質と熱を生み出す「ロストワックス製法」。
断熱はもちろん、トータルな省エネを計画的に進めるために。

品質への要求が厳しい精密機器部品。キングパーツの特徴である「ロストワックス製法」は精度の高い仕上がりを可能にする一方、製造過程でかなりの熱を放散します。そのため、同社では早くから空調対象エリアに断熱を施していました。平成23年には、社長を中心に、企画推進者、エネルギー管理員、各事業所責任者らから成るエネルギー管理組織を立ち上げ、本格的な省エネ活動をスタート。不要照明の消灯などに取り組みましたが、思ったほど効果は上がりませんでした。
そんな中で、第二種エネルギー管理工場に指定された翌年の平成26年、専門家からの助言が得られる省エネ診断の受診を希望されました。

診断結果と専門家からの提案

現状の問題をトータルに診断し、エネルギーの「見える化」と
個々の設備についての具体的な改善方法を提案。

診断を担当したエネルギー使用合理化専門員は、キングパーツのエネルギー使用状況を示す様々なデータを分析するとともに、入念なヒアリングの中から一つの問題に気づきました。受診者も自覚しているとおり、目標値が明確にできない、ターゲットを絞り切れない、思ったほど効果が上がらないといった問題は、すべてエネルギーの「見える化」が不充分であることに起因していました。
そこで現場視察では各種生産設備の運転状況やエネルギー消費量等について詳細な調査が入りました。
また、将来的に省エネ推進の観点からデマンド監視装置の導入を推奨されました。
この日発見された改善案は数値的なシミュレーションを得た後、1か月後の診断結果報告会で運用改善5件投資改善5件計10件が提案されました。

提案施策一覧

NO提案内容
1運用改善ボイラ空気比の適正化
2運用改善コンプレッサ吐出圧力の低減
3運用改善エア配管エア漏れ対策
4運用改善工業炉鋳型焼成炉の空気比適正化
5運用改善照明吸収式冷温水機をヒートポンプ空調機に更新
6投資改善コンプレッサ台数制御の導入、及びインバータ制御コンプレッサの導入
7投資改善生産設備ファン、ポンプのインバータ化
8投資改善照明高効率照明への更新
9投資改善デマンド管理熱処理工場の電力ピークシフト
10投資改善デマンド管理デマンド監視制御装置導入による最大電力低減

取り組みの成果とこれから

「見える化」から、新たに動き出した省エネ活動。
計画的に進行中。

省エネ診断受診後のキングパーツでは、提案施策を実施して効果を上げることはもちろん、状況に応じて的確な次の一手を打ちながら、着実に省エネ活動を進めていけるよう「見える化」への取り組みを重視。その成果は、まず運用改善に現れ、投資を伴う改善についても徐々に顕れはじめています。

さっそく「見える化」の効果があらわれた運用改善。

キングパーツでは、診断後の提案を受け、さっそく運用改善施策に着手。配管のエア漏れ対策として、省エネパトロールを実施することにしました。最初のパトロールでは予想された空気漏れ箇所は見つかりませんでしたが、圧縮空気を製造しているコンプレッサの吐出圧力や運転状態に問題があることが判り、吐出圧力の低減や運転台数の見直しを行い、ボイラと焼成炉については空気比の調整を行いました。 また今後の省エネ活動推進として、チェックシートによる定期的な省エネパトロールを計画中です。

効果を検証し、投資を伴う改善も進行中。

ファン、ポンプのインバータ化については、提案のあった翌年に1台を導入し、効果確認のためデータを取ることに。高効率照明への更新は、造型工場の蛍光灯をLED化したほか、水銀灯を高効率タイプの器具に交換するなど、省エネ中期計画として取り組みました。
また、コンプレッサについては、設備投資への補助金の活用も検討中。焼成炉についても、補助金を活用し、高効率タイプへの更新が計画されています。
また、これらの投資案件を実施するのに、具体的な手段や方法、役割・分担、スケジュールを綿密に定めた省エネ推進計画表を作成しフォローを行っています。

社内の中長期計画を見直し、継続的な改善へ。

省エネ管理組織のリーダーでもある高橋社長によると、省エネ診断後に起きた最も好ましい変化は、受診をきっかけとして、エネルギーの「見える化」が進んだこと。これによって、改善策の実施ターゲットが明確になり、具体的な目標値も設定しやすくなったとのこと。運用面の改善には確実に効果が上がっており、投資を伴う改善についても徐々に効果が見えはじめているそうです。 今後の省エネ活動については、「継続的に改善を行うため社内の中長期計画の見直しを行い、外部の補助金を活用するなどして着実に進めていく予定です」と語られました。