実際にカーボンハーフ、カーボンニュートラルを達成した事例で、
中小企業にも実現可能な事例を紹介
株式会社 山英
代表取締役 山崎 元郷 様
宇治、狭山と並び、日本の銘茶のひとつである静岡茶。その中でも渋みが少なく深い味わいの掛川茶は静岡県の地域三大ブランドに位置付けられています。今回紹介する株式会社山英様は掛川茶の製造販売・掛川茶を配合原料とした食品の加工販売を手がける昭和2年創業の老舗企業。残留農薬の心配のない健康な土づくりに基づく安心・安全な茶づくりにこだわり、全国高級煎茶品評会の受賞歴も多数あります。新たに省エネ・脱炭素にも取り組み、人と社会とお茶の共生を目指す、地域の先進的企業です。
飲料だけではなく食用のお茶も開発し、
海外にも展開
弊社は長年に渡り、飲料としてのお茶づくりを行ってきただけではなく、業界初の食用専用茶や発酵茶の商品開発・販売も行ってきました。近年ではお茶業界全体の国内需要は下がる傾向にあるものの、お茶の文化が定着している英国で日本茶のティーバッグの人気が高まっており、海外への輸出が急成長しています。
「環境に配慮したお茶づくりへの思い」と
「省エネ診断」
きっかけの一つに挙げられるのは、「環境に配慮した電気で、環境にやさしいお茶を作りたい」という思いです。お茶の製造工程は生産ラインだけではなく、酸化防止のための-7℃の冷凍庫や18℃の貯蔵庫にかかる電力使用量は大変大きなものになります。子どもたちの未来のために、例え小さな取組であっても、持続可能な社会に貢献したいという考えがありました。
また、電気代の高騰が将来的に経営を圧迫するのではないかというコスト面における危機感もありました。こうした背景の中で、「省エネお助け隊」の省エネ診断を受診し、さまざまな問題提起をしてもらったことは、これまであまり考えてこなかった省エネや脱炭素に対する意識が変わる契機となりました。
省エネ・脱炭素の取組を社員全員で展開
省エネ診断により、生産ラインの昼休み等の待機電力を削減したり、使っていない照明器具をこまめに消したりするなど、社内の節電の意識は非常に高まったと思います。特に、電力の見える化を図り、全体ミーティングを重ねて社員全員で課題解決に向き合うことにより、現場の工場長だけが管理をするのではなく社員全員による省エネ・脱炭素化への問題意識が醸成されたことが大きかったと思います。
高効率機器や太陽光発電設備への投資
照明器具についてはかねてからLED化を進めていましたが、環境省のSHIFT事業に採択されたことで、更に農産物加工場の冷蔵庫用冷凍機や空調機を高効率機器への更新し、太陽光発電設備を導入しました。太陽光発電設備は発電された電気は全量自家消費とし、足りない電気については再生可能エネルギーで発電した電気を購入しています。つまり使用電力についてはカーボンゼロを達成しました。
こうした設備投資により消費電力量は4割を超える削減を実現、CO2排出量は基準年から9割削減となり、さらに2025年には98%以上の削減が見込まれ、一気にカーボンニュートラル実現に向かうことができました。
また、コスト削減効果やCO2削減効果に加え、高効率空調機の更新に伴う工場内の室温の適正管理によって、従業員の労働環境が著しく改善されたことは非常に意義深かったといえます。
取引先から得られた高い評価
昨今は購買者にエシカル消費の概念が根付いたことで、卸先の企業様からは脱炭素の取組に関して一定の評価を得ています。今後も引き続き取引を行いたいという声もいただき、これらの取組は、人と社会と自然がつながり、安定と調和のとれた「循環」の輪が築かれることを目指す弊社の企業理念に通じていることを実感できています。
バランスの取れた取組が重要
原材料費や包材等の資材費の高騰だけではなく、光熱費をはじめとする間接経費の高騰は、業界全体でみても企業経営の課題となっていることは明らかです。ですから同じ業界にいる仲間として、お茶の加工業者やお茶農家にもこうした取組が広まってほしいと強く願っています。その一方でコスト削減のためだけではなく、地球環境にやさしい製品を生み出していこうとする道徳的な側面も社会全体では必要です。それぞれが両立するバランスを保ちながら、省エネや脱炭素の取組を進めていくことが事業者としてとても重要な要素であると考えています。