支援レポート Vol.10
まず「見える化」から。
省エネでできる、コストカットとこれからの地域貢献。
昭和47年1月創業。「おたる」「北海道」「鶴沼」「初しぼり」などのワインのほか、ビール、発泡酒、ヴィネガーの製造販売を手がける。北海道ワインが醸造するすべてのワインの原料は、国産ブドウ100%。
北海道ワインは2011年2月、ワイン冷却排水(地下水)の熱を有効に活用するため、工場内の機械洗浄用温水製造、事務所の空調をまかなうヒートポンプ空調・給湯システムを導入。
これを機に、ボイラや照明なども視野に入れた本格的な省エネ、特に節電による経費削減を検討することに。
そんなタイミングで参加した関連セミナーの場で省エネ診断を紹介され、受診を決意されました。
給湯用ヒートポンプ
空調用ヒートポンプ
担当したエネルギー使用合理化専門員は、個別設備の運転状態を確認し、蒸気配管からの漏れや冷凍コンテナの冷やし過ぎ、水銀灯などの従来型の照明などに着眼。デマンド監視装置の運用や、エネルギーの見える化から分析までの手順など省エネの進め方そのものについての改善も指摘しました。
診断結果報告書では運用改善5件と投資改善2件の計7件の提案となりました。
水銀灯
LED電灯
機器更新
NO | 提案内容 | ||
---|---|---|---|
1 | 運用改善 | 換気設備 | 機械室換気ファンの設定温度適正化 |
2 | 運用改善 | 冷凍設備 | 冷凍コンテナの設定温度適正化(空調)吸収式冷温水機の冷水温度の緩和 |
3 | 運用改善 | ボイラ | 空気比の適正化 |
4 | 運用改善 | 蒸気配管 | 蒸気配管の漏洩対策 |
5 | 運用改善 | デマンド管理 | デマンド監視による最大電力の低減(水)トイレ用水の利用 |
6 | 投資改善 | 給湯設備 | 熱源水ポンプへのインバータ導入 |
7 | 投資改善 | 照明 | 高効率照明への更新 |
ヒートポンプシステムの導入をきっかけにスタートした、北海道ワインの省エネ。診断後の提案を受け、できるところから着手するフットワークの軽さ。自社のコストカットだけで終わらせず、活動を通じて得たノウハウや意識を北海道という地域全体に還元していこうというヴィジョンのもと、省エネ活動を継続しています。
できるものから手をつけ、その後は補助金を活用しつつ。
提案内容は、作業環境を変えることなく実施可能なものであり、取り組むべき内容は明確でした。
すぐにできることから始め、設備更新は補助金を活用するという方針で、省エネ対策の実行を始めました。
デマンド監視装置を活用すべく警報設定値を状況に合わせて最適値に合わせる運用改善、冷やし過ぎであったコンテナ冷凍庫の温度設定の見直しなどを実施しました。
設備改善では、個別設備の効率化対策として、工場やギャラリーの照明器具の高効率化や受電設備の高効率化、冷凍コンテナの冷凍機の高効率化などを実施しました。同時に、EMS(エネルギー・マネジメント・システム)を導入し、冷凍コンテナに直付けされ個々に運転されていた冷凍機を、中央で運転監視制御できるようにしました。これにより、デマンドを監視し、冷凍機を間欠運転するなどの運用管理が行えるようになり、デマンド制御による最大電力の低減と事業所全体の省エネが進みました。
EMSで得られたデータは、エネルギー管理者が利用するのみならず、各拠点のホールに設置したモニターに節電目標・エネルギー使用状況を表示し、職員や施設利用者などに「見せる」ことで、節電施策の情報共有及び関係者の意識改善に繋げ、「参加型のEMS」活動を実施しています。
省エネを通じた「これからの地域貢献」を目指して。
直営農場(鶴沼ワイナリー)を持ち、100%国産ブドウだけを原料にワインを醸造している北海道ワイン。同社の製品は、北海道の大自然が育てた味わいとも言えます。
「弊社が推進する省エネ、co2削減への取り組みは、北海道の中小ワイナリーなどへの積極的なプロモーションを展開することによって地域に還元される」と同社では考えています。
「それが、地域の省エネ意識を高める上で大きな貢献を果たし、持続可能な社会の実現へ向けた取り組みが長期的に継続することを願っています」。